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アニメや音楽にファッション…
「好き」を科学する、経済データサイエンス<後編>
――ゼミ生の研究の流れを教えてください
津谷:まず、学生一人ひとりに関心のある事を聞き出します。その中から研究に必要なデータを洗い出します。そしてデータが抽出可能なものの中から候補を絞ります。そしてテーマを決めたら実際にデータを収集し、各種分析ソフトウエアやPythonなどのプログラミング言語を使って分析を行います。
――これまでの先生ご自身の研究の中で、最も印象的だったものは何ですか
津谷:AIを用いてアイドル楽曲のコード進行を分析し、その特性を探る研究を行ったことがあります※3。楽譜データは著作権問題から無料で入手するのが難しいのですが、コード進行はそれ自体に著作権が無いため比較的自由にダウンロードできます。そこで楽曲間のコード進行の類似性を示す散布図を作成し、アイドル楽曲の時系列の多様性の変化を考察しました。このような分析は音楽業界の作曲家やプロデューサーにとって、新たな楽曲制作のヒントになるかもしれません。
――数学が苦手な学生でもデータサイエンスを学ぶことができるとおっしゃいました。それでは、データサイエンスを学ぶ上で大切なものは何でしょうか
津谷:データサイエンスを学ぶ上で大切なのは、何かに強い好奇心を持っていることです。興味がなければ、データはただの数値の塊です。データサイエンスは単なる技術ではなく、興味を深掘りするためのツールです。例えば、好きな音楽の歌詞を分析して、その歌詞が表現している感情を数値化したり、好きなサッカーチームの試合データを分析して、勝利につながる要因を特定したり。あらゆることに、データサイエンスの視点からアプローチできるんです。
――学生たちは大学卒業後、どのような場面で経済データサイエンスを生かすことができますか
津谷:そもそも最初から社会に貢献するデータというものはなく、むしろその話題を知っているということが武器になると私は考えています。
マーケティングには応用が利くのはもちろんですが、日本のアニメや音楽といったサブカルチャーは今や海外でも評価されており、これらを理解することは人生の有益な糧となることは間違いありません。また、これらの文化現象をデータで分析することで、新たなビジネスチャンスや社会貢献の機会が生まれるかもしれません。それは単なる仕事だけでなく、人生を豊かにする経験にもつながるはずです。
――最後に、これからデータサイエンスを学びたいと考えている学生たちにメッセージをお願いします。
津谷:データサイエンスは今やあらゆる分野で活用されるようになっており、その重要性はますます高まっています。データサイエンスを学ぶことは、単に技術を習得するだけでなく、世の中の様々な現象を客観的に分析し、問題解決に貢献できる能力を身につけることに繋がります。ぜひ、積極的にデータサイエンスに挑戦してみてください。
※3 コード進行から見る音楽多様性, 第20回日本感性工学会大会予稿集, P-67 2018