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平成31年3月17日

平成30年度ノースアジア大学・秋田栄養短期大学 卒業式
  ―学長告辞 


長かった冬も終わって、感動的な暖かい春が訪れようといたしております。

このすばらしいときに、本学を卒業していく諸君に、心からお慶びを申し上げたいと思っています。また、ご列席の皆様にもこの場をお借りして、御礼を申し上げる次第でございます。

さて、学生諸君にお話しするのも、これが最後になるかもしれません。

私はあなた方に、どうしたら幸せに生きていくことができるか、仕事が成功するためにどうしたらいいかということを、ぜひ話をしておきたいと思っています。

人生は、時間です。時間が集まったものが、人生なんです。そしてその大部分は、当たり前のことですが、それは仕事です。仕事が楽しくない、つらいとすればどうなりますか。本当につまらない、つらい人生になってしまう。人生とは、言葉を変えれば、その人の生涯で残したものであるといってもよいと思います。

たとえば、ソクラテスから哲学をとったら、アインシュタインからあの相対性原理の論文をとってしまったら、どうなりますか。人として幸せに生きていくためには、自分が生きてきた証が必要です。そこが、大切なんです。

諸君はこれからの仕事を、金のためにやってはいけないんです。もちろん生きていくためには、生活も、お金も必要です。だけれども、それが究極の目的ではない。よく仕事をやっている人と、やらされている人というふうに言うことがありますけれども、諸君は決して仕事をやらされている側であってはいけない。仕事はするものであって、決してやらされてはいけないんです。

そして、役人でも会社員でも、何になろうとも一緒ですけれど、仕事は最初は雑用です。どんな偉い人だってそうなんですよ。だけどね、仕事に取り組む姿勢によって、そういうものでも生きがいを持てるし、また楽しくなってきます。そして、そういう人が成功するんです。

本田宗一郎という人がいます。もう亡くなりましたけれども、ご承知のように、本田モーターの創業者です。この人は、自転車屋だった。自転車を売る、あるいはパンクを直す、そんなことを店でやっていたんです。彼は、仕事が面白くて仕方がなかった。これは嘘じゃないんですよ。戦後、坂道をリアカーを付けた自転車で登っていく、重い荷物を積んで自転車で仕事をする、そういう人達を見て、何とか自転車に小さくてもいいから、エンジンを付けられないか、そういうことを考えたんです。進駐軍から払い下げを受けた小型のエンジンを、自転車の動力として付けようと朝から晩まで油まみれになってやっていたんです。店員さんたちも、本当に不休の寝食を忘れるようなそんな仕事をしていました。

本田は「自分は仕事はやったことがない。全部遊びだった。だから少しもつらくはなかった」と、そんなことを言っているんですよ。そして、後に彼は浜松工専の夜学に通ったんです。本田は高等小学校しか卒業していませんからね、エンジンを勉強したかった。だから本田の学問は本物です。卒業証書がもらいたい、学歴をつけたい、そんなものじゃないんです。

諸君は会社に入って、夕方から飲みに行こうと、そんなことを仕事中に考えてはいけません。何回も時計を見る、そんなことでは仕事は楽しくならないし、成功もしません。 入った当初は、できないかもしれない。つらい仕事になるかもしれません。だけど、そこから逃げてはいけないんです。仕事の中に、幸せも、そして夢も見つけなくてはいけないんです。

本田商店に勤めていた店員の人たちは、皆、後に本田モータースの大幹部になっています。成功者です。損得を計算したり、つらい仕事から逃げようとそんなことを考えたり、そんな人はいなかったんですよ。

あなた方のお父さんお母さんは、あなた方を育てて一番幸せに思うこと、それは何だと思いますか。

みんなから、将来何かをもらいたいとか、お金を得ようとか、そんなことじゃないんです。お父さんお母さんが、この世から去る時が来るんです。諸君は後に残されます。その残された諸君が、自分が選んだ道を、親がなくても一人で生きていける、職場でも大切にされる、ご両親がそう思うことができたとすれば、これほど幸せなことはないんじゃないですか。親というのは、子供に見返りを求めないんです。あなた方が立派に一人で生きていけるとすれば、それが何よりも親孝行だし、幸せなことはないんです。あなた方が、職を失う。職を転々としていたならば、お父さん、お母さんは死ぬに死にきれないんですよ。そこのところは、よく分からなければいけない、そう私は思います。

「巧言令色鮮し仁」ということが言われます。孔子ですね。職場では、へつらう者や、追従して生きていく人たちもいます。でもそれは、必ずメッキが剥がれます。本物ではないんです。誠実が一番です。追従し、巧みなお世辞を言って生きてきた人が成功した試しがありません。

誠実に、真剣に、これから生きていっていただきたいと思います。そしていつの日か、諸君が社会に誇れるような立派な人になって、私の前に現れる。その成長した姿を拝見できることを、楽しみにしています。

再度になりますが、ご両親及びご臨席の皆様方に御礼を申し上げて、私の告辞といたしたいと思います。

 

学長 小泉 健